長い爪では清潔感は出せない

発掘されたミイラにマニキュアがされていたという記録があります。そういう事実を踏まえて、また歴史を調べていくと、クレオパトラも現在は髪の染料で知られるヘナで爪を染めていたと言います。日本に移ると平安時代から爪のおしゃれはありました。江戸時代には「爪紅(つまべに)」と呼ばれ、ホウセンカの花から絞った汁をつけていたといいます。

日本の爪のおしゃれである「爪紅」を主に行ったのは、江戸時代のスーパーモデルとも言える、吉原遊郭の高級遊女である花魁たちでしょう。彼女たちの役割は単なる身体を売ることだけではなく、「恋愛」そのものを楽しませることでもあったのです。いうなれば「実世界にいない美女」「浮世離れした女」を演出する必要があったからだともいえます。

面白い話ですが、遊郭では花魁は「恋愛」を楽しませるというためにさまざまな工夫を行い、常に客よりも上にいることが喜ばれていました。そういう意味で近所のちょっとした美人では満足させられません。そこで単に衣装や化粧に凝るだけではなく、「私は仕事を一切しませんよ」という意味も込めて、「爪紅」を施していたとも考えられます。

少々、エッチな話になりますが、花魁も床を共にするわけです。その際には客の身体には傷をつけてはいけない、客のそばでは眠ってはいけないというルールがありました。そのため爪も伸ばすことはしていませんでした。また江戸っ子は「こざっぱり」「あっさり」という美意識を持っていましたから、爪の長いのは「野暮」とされていた理由もあります。

江戸っ子の美意識は「すっきり」していることです。いうなれば「粋」とは無駄を省いた部分にあります。衣装にお金がかかっていても、それを感じさせない、ということが良しとされていました。長い爪というのは清潔さを出すには苦労します。またどこか重く感じてしまい、色は差しても、伸ばすものではないという意識も高かったようです。

現代では長い爪を大事に整えている女性が多くなっていますが、正直なところ、清潔さを感じることは難しいものです。華やかなネイルカラーを塗っているとしても、やはり長過ぎる爪は古臭く、ごてごてした装飾までしていれば「野暮」としか言いようがありません。そのため手入れを行っていても、清潔感には乏しくなってしまうきらいがあります。